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WSD-F10 開発者インタビュー

実装設計 編

防水性、耐環境性、 視認性を徹底追求。
こだわりが生んだ アウトドア仕様の ハードウェアスペック。

アウトドアへの こだわりをカタチに

——— スマートウォッチでありながら、アクティブなライフスタイルに応えるスペックを搭載したWSD-F10。屋外でのアクティビティに応えるための工夫について、実装設計の立場から開発に携わった大村さんに話を伺いました。

 大村:実装設計の主な役割は、製品コンセプトに基づき、実装するデバイスや外装パーツの設計を行うこと。商品企画や外装デザインなど、各部門から寄せられたアイデアを、量産化に向けた製造工程や品質管理などの課題をクリアしながら、ひとつずつ最終的な形に落とし込んでいきます。

とはいえ、今回のWSD-F10の場合は、軸となるコンセプトが決定するまでに、数え切れないくらいの試行錯誤がありました。初期の段階では、日常やビジネスで使える汎用性の高いスマートウォッチを想定した案もあり、そのつど試作機を作り、開発チームで検証を重ねました。形状も丸型がいいのか、角型がいいのか。バンドはウレタンか、メタルかなど、細部にわたり徹底的に議論しました。時計メーカーとして、スマートウォッチというジャンルに挑戦する以上、中途半端なものは出せませんからね。

その結果、生まれたのが、アウトドアというコンセプト。ここから製品化が本格的にスタートし、各部門の動きも一気に加速します。アプリ開発、外装デザイン、UIデザインなど、すべての部門でアウトドア用途に特化した開発が進められました。実装設計部門では、このアウトドアというコンセプトを具現化するため、大きく3つの開発目標を定めました。それが、防水性、耐環境性、視認性です。

新規事業開発部

大村 明久


ハードな使用に応える 信頼のスペック

——— まずは、防水性と耐環境性について聞かせてください。

 大村:一般的なスマートウォッチの防水性能は、IP規格が多いですが、WSD-F10はアウトドアユースに対応するため、5気圧防水を採用しています。そのため、外装ケースやガラスの厚み、ボタン部、端子部、裏蓋の気密性などを確保する必要があるのですが、ネックとなったのはマイク部分でした。

WSD-F10には、Android Wear™ 標準の音声認識機能に対応したマイクを搭載していますが、通常の構造では必要な防水性が保てないことが判明。そこで、高気圧防水に対応した構造を独自開発し、防水性能を持ったマイク搭載型のスマートウォッチを実現しました。

また、耐環境性については、MIL STANDARD 810G*という規格に準拠。これは、米国防総省が制定した米軍の物資調達規格のことで、落下や振動など、様々な環境下において正常に作動することが求められます。これに対し、WSD-F10では、パーツの素材や形状などのデータを使ったシミュレーションで性能解析と試作を行い、耐久試験を実施。厳しい基準をクリアすることで、アウトドアのタフなニーズに応える耐環境性能を実現しています。防水性を確保しながら、同時に耐環境基準も満たす必要があったため、開発には手間も時間もかかりましたね。

マイク部

マイク部


使用環境を 選ばない視認性を目指して

——— 視認性という面では、どのような開発過程があったのでしょうか。

 大村:まずは、多彩な情報表示に対応するため、ワイドフェイスを採用。そのうえで、搭載する液晶に関して、アウトドアと普段使い、両方のシーンで快適に使える視認性を目指して開発を進めました。なかでも力を入れたのが、屋外における視認性の追求です。

カラー液晶は表現力が高い反面、屋外の太陽の光が強い場合(真夏の昼間など)に視認性が落ちるという問題があります。一方で、モノクロ液晶は、外光の反射によって表示を行うため、まぶしい太陽光下でもくっきりと見えるという特長がある。そこで、たどり着いたのが、カラー液晶とモノクロ液晶を重ねる二層構造という発想です。使用環境に応じて2つの液晶を切り替え可能にすることで、カラー液晶の表現力とモノクロ液晶の視認性、両者の利点をどちらも活かすことができます。

明るい場所でも暗い場所でも、立ち止まらずに行動しながらチラ見するだけで、知りたい情報がすぐにわかる。液晶単体の性能という意味の視認性ではなく、使用シーンまで想定した視認性は、時計メーカーとして常々こだわってきたことでした。

また、液晶の開発や実装には、高密度実装技術が使われています。ケース厚をできるだけ抑えながら2枚の液晶を搭載するため、デバイスの配置を最適化するなど、様々な工夫が施されています。

モノクロ液晶とカラー液晶の二層構造

モノクロ液晶とカラー液晶の二層構造


細部まで ユーザビリティを追求

——— そのほか、実装設計を行う際にどのような苦労がありましたか。

 大村:カシオがつくるスマートウォッチの第一弾ということもあり、各部門から様々な要望がありました。それらに応えるのに苦労しましたね。逆にいうと、様々なアイデアが多く集まったからこそ、完成度の高い製品に仕上がったともいえます。見た目は時計ですが、中身はほとんど別物。前例がまったくないので、実際の作業は、課題が見つかるたびに、それをひとつずつクリアしていくという試行錯誤の連続でした。

たとえば、右サイドのボタン。まず仕様から、アウトドアで手袋を装着したままでも操作しやすいようにと、ボタンの搭載を決定。数についてはデバイスの配置の関係もあるため、商品企画と協議し、3つが最適であると判断しました。ボタンの数は、基板の配置にも大きく関係してくるので、実装設計するうえでは大きな要素となります。

また、充電端子にはマグネット圧着式を採用。裏面ではなく側面に配置しているのは、装着時の汗による接点部分への影響を考慮。丸型の端子形状も、コネクタの向きを気にせず接続できるよう配慮した結果です。

バンドも、柔らかめのウレタンを使って装着感を高めています。ソフトすぎると成形性に問題が出てくるので、バランスを見ながら、最適な配合の樹脂を選択しています。

ボタン部

ボタン部

マグネット圧着式充電端子

マグネット圧着式充電端子

ウレタンバンド

ウレタンバンド

 大村:開発部門それぞれの想いを、いかにそのまま形にできるかが実装設計の役割。見える部分にも見えない部分にも、たくさんの発想や技術が詰まっています。そのこだわりをユーザーのみなさんに少しでも感じていただければうれしいです。

——— WSD-F10のアウトドア用途に特化した機能やデザイン。そこには、多くの開発者の熱意が込められています。そして、その想いを具現化し、ユーザーが手にする製品へと仕上げるのが実装設計。独自の技術や発想で様々な課題をクリアし、細かい部分にまで気配りを行き届かせる。スマートアウトドアウォッチという新たな挑戦に際し、WSD-F10に注ぎ込まれたこだわりの数々に、ものづくりに対するひたむきな姿勢が感じられます。


  • * ●落下:MIL-STD-810G Method 516.7 Procedure Ⅳに準拠した試験を実施。●振動:MIL-STD-810G Method 514.7 ProcedureⅠに準拠した試験を実施。●湿度:MIL-STD-810G Method 507.6 ProcedureⅡに準拠した試験を実施。●太陽光照射:MIL-STD-810G Method 505.6 ProcedureⅡに準拠した試験を実施。●低圧保管:MIL-STD-810G Method 500.6 ProcedureⅠに準拠した試験を実施。●低圧動作:MIL-STD-810G Method 500.6 ProcedureⅡ に準拠した試験を実施。 ●高温保管:MIL-STD-810G Method 501.6 ProcedureⅠに準拠した試験を実施。●低温保管:MIL-STD-810G Method 502.6 ProcedureⅠに準拠した試験を実施。●温度衝撃:MIL-STD-810G Method 503.6 ProcedureⅠ-Cに準拠した試験を実施。●氷結:MIL-STD-810G Method 521.4 ProcedureⅠに準拠した試験を実施。
    (本端末の有する性能は試験環境下での確認であり、実際の使用時すべての環境での動作を保証するものではありません。また、無破損、無故障を保証するものではありません。)